プロポスタが手がける「project 中島町」第2回目のインタビューは、このプロジェクトの設計・デザインをイタリアのデザイナーニコラ・ガリッツィアとともに手がける株式会社 タカスガクデザイン アンド アソシエイツの代表・高須学さんとチーフデザイナーの手島紗夜さんです。
プロポスタ山川との出会いから、中島町という建物の魅力、「project 中島町」の進捗とともに、コロナの時代の空間デザインとはまで、話題が尽きることはありません。「時間」をテーマに様々なプロジェクトを手がけるタカスガクデザイン アンド アソシエイツのアトリエにお邪魔してのインタビューです。
学さんから提案いただいたパン屋のプランは、いいデザインでしたよね。
なんせ私の要望が、どこを変えたのかわからない改装してくれというオーダーですから(笑)。今考えたら凄く失礼な発注ですね。
カッコいいおじさん達がいつもおられたのですが、怖かったですね。
山川 奥の建物までに行くアプローチも大人でした。
高須学 「間」がある空間でしたね。
手島紗夜 私は、プロポスタさんに行くときに、ここが噂の中島町の跡地かと思いながら見ていました。「project 中島町」に携わるようになって初めて建物の中に入りました。とにかく古さを感じさせない空間です。この先もずっと当然のようにここにあるべき建物という不思議なインパクトがある空間です。私たちがどう手を入れて行くかを考えるとすごくプレッシャーを感じました。
山川 現在、計画が進行している「project 中島町」を構想した時点で、タカスガクデザイン アンド アソシエイツに基本設計をお願いするということは決めていました。そしてイタリア人の(*)ニコラ・ガリッツィアにも入ってもらっています。「project 中島町」は、キッチンを中心としたダイニングを取り扱うブランド「Dada」を紹介するスペースにします。このプロジェクトでは、タカスガクデザイン アンド アソシエイツとニコラ・ガリッツィアのふたつのコンセプト、アイデア、デザインが協同しています。
ニコラは、その「Dada」のデザイナーでもあるし、ニコラ自体が、この「中島町」を何度も見てとても気に入っているので彼の作る基本デザインとガクさんの構成力が響き合い良い結果が生まれるはずだと思っています。
高須学 われわれの仕事は、まずはニコラのアイデアを具体的にカタチにする翻訳作業でもあり、より現実的でハイレベルな高みにこのプロジェクトを押し上げることだと思っています。一番手を入れるのは、ディテールですね。「神は細部に宿る」という言葉に関わるようなディテールを作って行くのは、われわれの作業になります。出来上がったものがどう美しくなるかです。
山川 基本的に、ガクさんもニコラも考え方は一緒なんです。現状の「中島町」を残すという前提ですので、あとは、ウッドデッキはどうする?とか、トイレはどうする?とか具体的な案件をクリアして行く作業です。また材料を何使うかということも大事な要素です。
手島紗夜 通常一般の人は自由に入れない施設であり、ただし何かあるという雰囲気も出さなくてはいけません。外からのアプローチも変わります。
山川 今回のオファーの重要なものの1つに、外観から見てプロポスタと中島町を一体化させたいというものがあります。
高須学 面白いし難しい仕事です。
山川 いつもすみません(笑)。
(*)[ニコラ・ガリッツィア]
ミラノに生まれ、ミラノ工科大学建築学科で学ぶ。1990年から1999年までルカ・メダのアシスタントとして、Molteni&CとDadaのイメージと製品のクリエイティブにあたり、1999年からは開発コンサルタントを務めた。2003年に彼はMolteni&Cのアートディレクターに就任し、新グラフィックプロジェクト、コンセプト、製品カタログ制作、主要見本市のブースデザイン、デザインとファッションの店、イベントに力を入れている。彼はイメージと製品開発のコンサルタントを務めている。
1999年からガリッツィアはCamera Groupのアートディレクター兼デザイナーを務め、Pentaの木製ランプ、陶器ランプ、Jei-Jeiランプをデザインした。彼はPitti Livingの見本市ブースをデザインし、Molteni&CのDominoコレクションをデザインした。2005年、ガリッツィアはミラノにインテリアデザインスタジオCZ36を開設した。
リビングとダイニングが一体となることでそこに人が集い、食べ、飲み、話しをすることが今とても大事なことになっているので、必然的にキッチンの重要性が増しています。しかし、コロナの影響で、気のあう仲間とみんなで集まって食事をするということができないことが一番さみしいですね。
今まで店舗とは、コストを抑え、回転率をあげ、なるべく人を密に入れて行くことでした。その結果の数字だけに注目して、実はお客様の心地よさや満足度、人間本来の居心地の良さなどは後回しにされてきました。ビジネスにおけるコミュニケーションもどれだけ多くの人に限られた時間で会い、成果をあげるかといった速さと量が求められていたと思います。しかしコロナは、そのような現状に強制的にストップをかけました。時間は、もっとゆっくり、空間は、十分の間を取る必要があります。スローに広くゆとりを持った生活に向かわざるを得ない状況です。でも、それって実は、とても快適で幸せなことなのではないかと思っています。
今まで急ぎすぎていたことが異常だったと気がついて、それがより人間らしい状態であればこれはいいことだと思っています。われわれが設計やデザインをする上で求めていても、なかなか聞き入れられなかった十分な空間と時間の提案に、時代が近づいてきたとすればコロナは困難で不幸な事態もたくさん生み出しましたが、ポジティブに考えることも大事だと思っています。
プロポスタのショールームは、コロナを機に、オープンを11時、クローズを17時に変えました。あとは全部ネット予約にしました。一見縮小したように見えますが。昨年と比較をすると来店数は増えています。今まで慣習で過ごしていた時間が随分無駄なものもあったんだなとコロナが気づかせてくれました。その余った時間で何をするかという大事な問題があります。余った時間を会社で過ごすことよりプライベートで自分の大切なものに使える時間が増えたとしたら、私も含めてプロポスタのスタッフにとってもいいことだと思っています。
お二人の仕事もそうだと思いますが、仕事とはその人がプライベートで何を考え行っているかで随分変わってくるものだと思います。