INTERVIEW

2020.09.30
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INTERVIEW 02

プロポスタが手がける「project 中島町」第2回目のインタビューは、このプロジェクトの設計・デザインをイタリアのデザイナーニコラ・ガリッツィアとともに手がける株式会社 タカスガクデザイン アンド アソシエイツの代表・高須学さんとチーフデザイナーの手島紗夜さんです。

プロポスタ山川との出会いから、中島町という建物の魅力、「project 中島町」の進捗とともに、コロナの時代の空間デザインとはまで、話題が尽きることはありません。「時間」をテーマに様々なプロジェクトを手がけるタカスガクデザイン アンド アソシエイツのアトリエにお邪魔してのインタビューです。


Interview Video
プロポスタとタカスガクデザイン アンド アソシエイツとの出会い

山川登久プロポスタ代表(以下、山川) 高須学さんとは、私が福岡市に出てきてプロポスタを始めてからの付き合いです。広い意味で同じ業界ですし、仕事として関わる前からお互いを知っているという関係でした。営業をする上では私どもからプロポスタとタカスガクデザイン アンド アソシエイツにお仕事を依頼する場合もありますし、弊社へ発注をいただくこともあります。初めて一緒に仕事をしたのは、パン屋さんの店舗設計でしたね。

高須学(株式会社タカスガクデザイン アンド アソシエイツ代表・デザイナー/以下、高須学) そうでしたね。

手島紗夜(株式会社タカスガクデザイン アンド アソシエイツ チーフデザイナー/以下、手島紗夜) 10年ほど前のプロジェクトですね。

山川 大手資本のパン屋さんのプロジェクトでした。プロポスタが企画・施工・管理という全体を受けた案件でした。店舗デザインを学さんに依頼しました。「しずる感」というテーマでデザインを始めたんでしたね。その時は、プロポスタ初期でもあり会社の組織づくりも考えていた頃でした。お客様の意向を全て弊社で受けて、それを細分化し社内外で管理、進行しながら問題を解決していくという組織づくりを模索していました。その中で、建築設計やデザインに関しては、外部の方と連動して行おうと思っていました。建築に関しては、何人か頭に浮かぶ方がいましたが、デザイン、特に店舗のデザインということに関しては、当時、学さんしか頭に浮かぶ人はいませんでした。
学さんから提案いただいたパン屋のプランは、いいデザインでしたよね。

高須学 当時、いくつかのパン屋さんをリサーチして、R(曲線)を描いた図面をお出ししました。

山川 もちろん、クライアントあっての仕事なので、われわれと学参で考えた当初の案通りにはならなかったのですが、素晴らしい仕事をしていただきました。

手島紗夜 そのあと、もう一軒、長崎のパン屋さんのお仕事をさせていただきました。

高須学 手嶋が手書きで描いたパンなどのイラストを店舗の壁面に使いました。

山川 そのあと、逆に学さんからお仕事をいただいて高層マンションの住宅の改装や、店舗改装のお仕事をさせていただきました。


タカスガクデザイン アンド アソシエイツの魅力

山川 私の勝手な解釈ですが、タカスガクデザイン アンド アソシエイツのデザインは、いい意味で尖った感がないと思ったんです。それはどういうことかというと、「オレが」っていう主張がまず先に出るクリエイターって多いのですが、そういう方にお仕事を依頼すると、こちらの要望、あるいはわれわれの後ろにいるクライアントの意向がないがしろにされる場合がよくあります。ガクさんの場合は、われわれの意向をまずは理解し噛み砕いていく能力、そしてクライアントの希望を最適化して、なおもレベルの高いものを考えることができる能力に秀でていると思っています。

高須学 私は、山川社長とお仕事をご一緒させていただく前から、プロポスタさんで開催されている新作の発表やインテリアに関わるイベント等に招待いただいていました。プロポスタという会社は、あの中島町のショースペースでアルフレックスやモルティーニの最高級のイタリア家具を取り扱っている福岡でもトップレベルの商品を揃えた会社です。事務所を立ち上げた10数年前は、私もクライアントも若かったのでプロポスタさんの扱っている高級な家具をすぐ買って使っていただけるお客さんは少なかったです。でも、いつかプロポスタの商品を使って店舗なり住宅なりの仕事がしたいなと思っていました。やがて徐々に、われわれも多様なクライアントとのおつきあいも広がり、プロポスタさんの家具をオーダーする機会も増えてきました。プロポスタさんとお仕事をする場合、当然クオリティーの高いものが要求されます。


プロポスタの改装を手掛けられた頃

山川 プロポスタの店舗の最初の設計は、ZEN環境設計の中村久二さんにお願いしました。その後、店舗の改装を3年前に行った時は、ガクさんにご協力をお願いしたんです。

高須学 プロポスタの1階の入り口周辺のスペースを改修させていただきました。全体的なレイアウトを変えたり主に照明計画の見直しを行いました。当時考えたことは、あの建物の持つ時代感を壊す必要はないということです。尖ったモダニズムではないある種の暖かさを併せ持つ雰囲気を活かしたいと思いました。その意味でもともとあって隠されていたとても雰囲気の良い階段を復活させました。職人さんの手が入った素晴らしい階段だったので山川社長に提案させていただきました。

山川 タカスガクデザイン アンド アソシエイツさんからすれば、低予算の利益の少ないお仕事を引き受けていただきました(笑)。
なんせ私の要望が、どこを変えたのかわからない改装してくれというオーダーですから(笑)。今考えたら凄く失礼な発注ですね。

高須学 いやいや、すごくいい建物なのでどこを変えたのかわからないイメージという意味は、すごく共感できました。あの建物自体の魅力は強いですよね。そもそも、プロポスタさんに必要なものとは、家具が映える箱を作るということです。箱が主張しても、そこに並ぶ家具が生きていないと意味がないわけです。主張すべきは、家具であるべきと考えると自ずと答えは出てたような気がします。

手島紗夜 私が、プロポスタさんに最初にお伺いしたときに感じたのは、あの外観に向かって歩いてきても外からでは、室内の様子がわからない不思議な空間だということです。実際中に入ったら時間がそこだけ切り取られているような印象を持つんです。それでいてとてもリラックスできる魅力的な場所ですね。

山川 リニューアル後も、初めてきた人が元々こういう空間だったと思うような仕上がりになっています。だけど実は、照明も材料も新しいものに変わっている、前からあるものと見事に調和させていただいています。それが私はすごく嬉しかったですね。

高須学 プロポスタは、入口から中庭を見ながら奥に入ると、それぞれのシチュエーションを分けるレイアウトがなされていて、身体感覚に沿っていて非常にバランスがいいんです。

山川 それから、これを読まれている方にプロポスタに来られる際に是非見て頂きたいのですが、入り口の看板の高さをガクさんに決めていただいたわけですが、この高さが絶妙なんです。当時、プロポスタに在籍していたスタッフの一人が「今度の看板の位置がおかしいから、位置を上に上げるように頼んでおきますね」と言ってきたんですよ(笑)。思わず「あの高さの良さがわからないか?」とやり返した思い出が残っています(笑)。


「project 中島町」の取り組み

山川 今では、伝説のバーと言われている「中島町」は、私が39歳か40歳ぐらいのときでした。当時、福岡市内に出てきたばっかりで人とのおつきあいもこれからで、お店に行って時には名刺を渡して顔を覚えてもらって、仲間に加えてもらったという感じでしたね。独自の雰囲気のある名店でした。

高須学 バーの時代の「中島町」は、そう簡単に行ける店ではなかったのですが私がまだ20代で、この世界に入って一年目か二年目の頃に、師匠の長峰秀鷹さんに連れられて何度か行きました。かなりビビって行っていました(笑)。
カッコいいおじさん達がいつもおられたのですが、怖かったですね。

手島紗夜 私は、「中島町」の存在は知っていましたが、残念ながら行ったことはなかったですね。

高須学 いつかこんな店の常連になる大人になりたいなと思わせてくれる店でした。

山川 来ているお客さんも、銀行の頭取や役員、建築家、デザイナー、会社の社長といった地元、あるいは東京の名士ばかりでした。

高須学 桜の木の下の赤煉瓦の佇まいは衝撃的でしたね。特にあのスケール感、小さい店なんですよ。その小ささがものすごく印象に残っています。言葉にするのが難しいのですが、デザインされてないデザインというか、当時、私は商業デザイナーを目指したばかりの頃で、一所懸命頑張ってデザインをしていた時期でした。時代は、ポストモダン全盛の頃ですからこれでもかというぐらい国内外の有名なデザイナーや建築家が凝ったデザインをやっていて、当時私もそれを勉強していました。そこへあのサイズ感と、力の入っていない感じのする空間。そこには、日本的なものも感じだし、新しいモダニズムも感じました。流行とか時代の主流とか最終的には関係ないんだと思ったことを憶えています。

山川 奥の建物までに行くアプローチも大人でした。

高須学 「間」がある空間でしたね。

手島紗夜 私は、プロポスタさんに行くときに、ここが噂の中島町の跡地かと思いながら見ていました。「project 中島町」に携わるようになって初めて建物の中に入りました。とにかく古さを感じさせない空間です。この先もずっと当然のようにここにあるべき建物という不思議なインパクトがある空間です。私たちがどう手を入れて行くかを考えるとすごくプレッシャーを感じました。

山川 現在、計画が進行している「project 中島町」を構想した時点で、タカスガクデザイン アンド アソシエイツに基本設計をお願いするということは決めていました。そしてイタリア人の(*)ニコラ・ガリッツィアにも入ってもらっています。「project 中島町」は、キッチンを中心としたダイニングを取り扱うブランド「Dada」を紹介するスペースにします。このプロジェクトでは、タカスガクデザイン アンド アソシエイツとニコラ・ガリッツィアのふたつのコンセプト、アイデア、デザインが協同しています。
ニコラは、その「Dada」のデザイナーでもあるし、ニコラ自体が、この「中島町」を何度も見てとても気に入っているので彼の作る基本デザインとガクさんの構成力が響き合い良い結果が生まれるはずだと思っています。

高須学 われわれの仕事は、まずはニコラのアイデアを具体的にカタチにする翻訳作業でもあり、より現実的でハイレベルな高みにこのプロジェクトを押し上げることだと思っています。一番手を入れるのは、ディテールですね。「神は細部に宿る」という言葉に関わるようなディテールを作って行くのは、われわれの作業になります。出来上がったものがどう美しくなるかです。

山川 基本的に、ガクさんもニコラも考え方は一緒なんです。現状の「中島町」を残すという前提ですので、あとは、ウッドデッキはどうする?とか、トイレはどうする?とか具体的な案件をクリアして行く作業です。また材料を何使うかということも大事な要素です。

手島紗夜 通常一般の人は自由に入れない施設であり、ただし何かあるという雰囲気も出さなくてはいけません。外からのアプローチも変わります。

山川 今回のオファーの重要なものの1つに、外観から見てプロポスタと中島町を一体化させたいというものがあります。

高須学 面白いし難しい仕事です。

山川 いつもすみません(笑)。

(*)[ニコラ・ガリッツィア]
ミラノに生まれ、ミラノ工科大学建築学科で学ぶ。1990年から1999年までルカ・メダのアシスタントとして、Molteni&CとDadaのイメージと製品のクリエイティブにあたり、1999年からは開発コンサルタントを務めた。2003年に彼はMolteni&Cのアートディレクターに就任し、新グラフィックプロジェクト、コンセプト、製品カタログ制作、主要見本市のブースデザイン、デザインとファッションの店、イベントに力を入れている。彼はイメージと製品開発のコンサルタントを務めている。
1999年からガリッツィアはCamera Groupのアートディレクター兼デザイナーを務め、Pentaの木製ランプ、陶器ランプ、Jei-Jeiランプをデザインした。彼はPitti Livingの見本市ブースをデザインし、Molteni&CのDominoコレクションをデザインした。2005年、ガリッツィアはミラノにインテリアデザインスタジオCZ36を開設した。


Dadaについて

高須学 Dadaは数年前から、モルテーニのチームに入ってヴィンセント、ヴァン・ドゥイッセンがブランドディレクターを手掛けるようになって劇的に進化したブランドです。凄く多様な見せ方のできるブランドです。

山川 最近のヨーロッパの住空間の新しい流れのひとつに、リビングとキッチンのテイストを合わせる傾向が主流になっています。リビングとキッチンのスペースが曖昧になるイメージです。イタリアなどは特に、週末家族や親類が集まって食事をするという文化があります。
リビングとダイニングが一体となることでそこに人が集い、食べ、飲み、話しをすることが今とても大事なことになっているので、必然的にキッチンの重要性が増しています。しかし、コロナの影響で、気のあう仲間とみんなで集まって食事をするということができないことが一番さみしいですね。

手島紗夜 人とのコミュニケーションのあり方が変わってきていることが、様々なディテールまで影響を及ぼしているのを実感します。

山川 Dadaは、モルテーニという完成されたブランドのデザインフィロソフィーを継承するキッチンブランドになりました。Dadaのパーツは、モルテーニの収納のパーツと連動されているので一体化された空間が作れるという魅力があります。


コロナで変わること変わらないこと

高須学 私は、今回のコロナ禍で空間作り、コミュニケーションデザインは、本来理想とされるべき住まい方や楽しみ方に近づいて行くような気がしています。
今まで店舗とは、コストを抑え、回転率をあげ、なるべく人を密に入れて行くことでした。その結果の数字だけに注目して、実はお客様の心地よさや満足度、人間本来の居心地の良さなどは後回しにされてきました。ビジネスにおけるコミュニケーションもどれだけ多くの人に限られた時間で会い、成果をあげるかといった速さと量が求められていたと思います。しかしコロナは、そのような現状に強制的にストップをかけました。時間は、もっとゆっくり、空間は、十分の間を取る必要があります。スローに広くゆとりを持った生活に向かわざるを得ない状況です。でも、それって実は、とても快適で幸せなことなのではないかと思っています。
今まで急ぎすぎていたことが異常だったと気がついて、それがより人間らしい状態であればこれはいいことだと思っています。われわれが設計やデザインをする上で求めていても、なかなか聞き入れられなかった十分な空間と時間の提案に、時代が近づいてきたとすればコロナは困難で不幸な事態もたくさん生み出しましたが、ポジティブに考えることも大事だと思っています。

手島紗夜 今までと同じやり方は通用しないと感じつつも、今までできなかった工夫やアイデアが生まれる余地が増えたと思っています。仕事や家庭の雑務に追われて案外やっていなかったことを気づかせてくれました。例えばweb会議で今まで移動に使っていた時間が縮小されたり、時間にもゆとりができました。新しい解決策のバリエーションがどんどん増えていっているように思います。

高須学 スペースとは空間のことですが、うちの事務所のテーマは時間だと考えています。今まで見たことないものを作って感動してもらう未来へ向けた時間を提案する一方、昔見た景色を再現して感じてもらう時間といった、時間軸を操作させることで生まれるデザインがあります。コロナ禍による事態は、今までの時間と間のあり方をものすごく変えたと思います。

山川 私は、60年生きてきてイケイケの時代も経験しましたが、今の状況を体験しながら、これは面白いと思える変化もあれば、これは困るということもあります。例えば、やっぱりzoom会議だけではダメだと思うこともあります。早くみんなで集まって仕事の話をしたいと思います。
プロポスタのショールームは、コロナを機に、オープンを11時、クローズを17時に変えました。あとは全部ネット予約にしました。一見縮小したように見えますが。昨年と比較をすると来店数は増えています。今まで慣習で過ごしていた時間が随分無駄なものもあったんだなとコロナが気づかせてくれました。その余った時間で何をするかという大事な問題があります。余った時間を会社で過ごすことよりプライベートで自分の大切なものに使える時間が増えたとしたら、私も含めてプロポスタのスタッフにとってもいいことだと思っています。
お二人の仕事もそうだと思いますが、仕事とはその人がプライベートで何を考え行っているかで随分変わってくるものだと思います。

手島紗夜 ステイホーム中に感じたことは、自身で時間をコントロールすることが意外に楽しくもあるということです。家で仕事しつつ家事もしていて、心の余裕ができたなと思うことはありますね。

山川 もう無理してやっていることは全部やめてしまおうかと思っています(笑)。みんな自分のできないことを自分一人でやろうとしないで、周りとお互いフォローアップしながら物事を進めていけばもっと自由な時間が増えると思うし、せっかくコロナが気づかせてくれて無駄なことを自身のプライベートも含めて見直して欲しいなと思います。一人ひとり人間としての棚卸をしてもいいのではないかと思います。

PROFILE
プロフィール画像
高須学
株式会社 タカスガクデザイン アンド アソシエイツ 代表(写真右)
1974年福岡生まれ。九州芸術工科大学芸術工学部工業設計学科卒業後、長峰秀鷹氏に師事。2002年にタカスガクデザインを設立。クライアントとエンドユーザーのためのショップインテリアデザインや、スマいてそれぞれの心地よい「間」を導き出す住空間デザイン、モノ本来の持つべき姿形やそのストーリー性を深く読み、腑に落ちる形を追求する家具プロダクトデザインなど、空間から家具・日常品のプロダクトデザインまで幅広い領域でデザイン活動を行なっている。


手島紗夜
株式会社 タカスガクデザイン アンド アソシエイツ インテリアデザイナー(写真中央)
1981年佐賀生まれ。日本デザイナー学院 九州校を卒業後、タカスガクデザインにインテリアデザイナーとして入社。「シンプルに、永く、美しく」をデザインコンセプトに、いつの時代も変わらず空間そのものや物自体に潜む本来の美しい音色を最大限に増幅させる「良質なアンプのようなデザイン」を心がける。


山川登久
株式会社ヤマカワ装飾代表取締役社長(写真左)
1960年北九州市生まれ。成蹊大学経済学部卒業。卒業後、米国メインフレームコンピューター会社に勤務。電力会社、特に原子力発電を中心とした発電系システムをフィールドとする営業を担当。1998年ヤマカワ装飾入社。2000年にPROPOSTAを開設。
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